バンドマンは得てして夏が似合わないものであるが、近年は夏フェスが盛大に行われることによりそういったイメージはどんどんと消えていっている。
その中でも特に真夏の太陽が似合わないのがV系だ。
だいたいにおいてV系バンドマンはしっかり化粧していることが多いので、汗や湿気は大敵である。
だがしかし!そんなV系バンドだって、季節感をいつも無視はできない。
つまり、「夏曲」を持っているバンドも数多くいるのだ。
ちょっと季節は早いが、そろそろ紫外線が気になる季節。
古いものを中心に、V系夏ソングを一挙ご紹介しよう。
親に紹介できないバンドだってこんな爽やかな曲を歌っている
太陽の碧/DIR EN GREY
2018.04.25に新曲「人間を被る」を発表するDIR EN GREY。
デビューしたての頃にはこんな爽やかな楽曲を歌っていた。
あんまり爽やかすぎてファンがびびったぐらいである。
サビの開放感が気持ちよく、夏曲に一家言ある人間でも「これがV系の夏ソング王道だよな」と感じ入ってしまう出来だ。
おんなじ曲を別曲として打ち込んだ型破りのシングル
神経がワレル暑い夜/PIERROT
ピピーっ!ピエラーが一言申すぞ!!
この「神経がワレル暑い夜」だが、「夏曲」としてのくくりより、収録形態が面白い。
カップリング曲は「神経がワレタ寒い夜」。
タイトルから察知できる通り、メロディが全く同じ曲をアレンジを変更して別楽曲として収録している。
アレンジが違うのだから聴いた感触も違うのだけれど、歌詞はそこまで変更されていない。
PIERROTが描いた神話上でも重要な位置を表す楽曲なので、是非とも両方聴いてみて欲しい。
火の粉をあげて舞い上がる輪廻
火の鳥/FANATIC◇CRISIS
ディルとピを紹介したらファナも紹介しないわけにはいかない。
これは明確に「夏」のシーンが出てくるわけではないのだが、楽曲の構成的に「夏」を感じることができるようになっている。
個人的には「名古屋系」と呼ばれていたあの暗くてドロドロした音楽性からよくもこんな爽やかな(しかし若干熱い)ラブソングを歌えるほどに方向転換できたのかが不思議なのだが、デビュー後のこの方向性の方があっていたんだからそれはそれでいいか。
ノスタルジーならおまかせのムックど定番曲
家路/ムック
ムックは郷愁を感じさせる楽曲ならお手の物、といったところだが、この「家路」もまさにそのうちの一曲だ。
田舎のあぜ道、幼馴染との帰宅。ホタルが瞬いて、帰りたくないなと思う…。
まるでくっきりと情景が浮かぶような楽曲だ。
夏らしさは「ホタル」と「浴衣」という単語から推察できる。
このエモーショナルな歌詞を歌い上げるのに、バンドサウンドがまったく揺らがない安定感があるのが良い。
一陣の風のように爽やかな、でもちょっとほろ苦い
夏恋/シド
ちょっと一発爽やかなのもいっておきましょう。
シドも有名になり始めた頃は歌謡曲テイストのロックを発表していたが、それがいい感じに「ポップス」と融合してこういった楽曲になった。
爽やかさ溢れるメロディなのに、どことなく歌詞にねっとりしたものを感じるのはそのせいか。
好きな人の隣でドキドキしながら「手、汗かいてないかな」と考えるような乙女系男子におすすめである(女子はもっとシビアだからね!)。
これぞV系夏曲!耽美と天鵞絨の闇の世界
ever[bule]/ROUAGE
もうね、この曲を知って欲しい。
いわゆる「名古屋系」の旗手であった「ROUAGE」のいくつかある代表曲のひとつなのだが、「ザ・V系」という感じがしませんか。
そう、私たちがV系に求めてるのはこのテイストなんだよ!!!
PVも全く夏らしくなく、でも歌詞に「蒼い夜」とか出てるからには夏であるらしく、本当V系は季節感を意識してんだかしてないんだか。
歌唱力も演奏力もV系の平均よりよっぽど高いのに、なぜか認知度が低いのでこれで興味を持ったら是非他の楽曲も聴いていただきたい。
お祭り気分絶好調!花火の下で手を握る
EDO FUNK/LM.C
オフィシャルの映像が振付の映像だったのであんまり気にしないで見ていただきたい。
LM.Cにはあまり詳しくないのだが、一曲通して振付があるというのはいいなあ(ピエラー)。
しかも単純なのがいい。覚えやすい。
楽曲としては「キラキラ10代夏祭り!隣のあの子と急接近!?」という感じである。
mayaの声でこんな可愛い歌詞を歌われたらなんとなくドキドキしちゃうな。
小鼓の音がアクセントになっており、大変楽しい一曲である。
実はV系バンドは夏が好き!?
ここには紹介しなかったが、案外V系というくくりでもたくさん夏曲はある。
Janne Da Arcにも何曲かドライブに合いそうな曲があるし、病み病みでお馴染み密室系のcali≠gariだって「夏の日」というそのものズバリな楽曲を発表している。
GLAYだって大雑把なくくりではV系だ。
肺病病みの見た蜃気楼のような夏と、燃え落ちる太陽の下で加速する夏と。
様々な夏が「V系」というブラックボックスには収まっている。
夏になると聴きたくなる一曲が、きっと見つかるはず。
文=阿部春泥