おとぎ話とも童話とも違う空想の世界…ボカロ中世風楽曲5選

「中世ヨーロッパへの憧れ」、みなさんお持ちじゃないですか?
私はめちゃくちゃあります。大好きです大好物です。
オタクは心に常に中二病精神を飼っているんだと思います。

もちろんVOCALOID作曲者にそういう趣味の人もいるわけですよ。
ゴシックなだけでなく、史実もしくは伝説と若干の被りがある曲をまとめてみました。
古めの曲が多いですが、どれも名曲でその世界に嵌まり込むこと間違いなしです。

人が人を殺すことを認めていた時代の苦しみ

「魔女」すずきP


鏡音リン・レン、がくっぽいど、初音ミク、巡音ルカによる合唱曲。
ルカが魔女であり、一国の王子であるがくぽをたぶらかしたとして魔女裁判にかけられるストーリーとなっている。
ところどころ入るラテン語が、より中世らしさを表している。

ひよこまんじゅうPの動画も素晴らしい。
「すずきP」は他にも合唱曲、デュエット曲を多く発表しており、そのどれもがクオリティが高いので安心してマイリストを巡って欲しい。

今こそ世界に革命を!鎖を引きちぎり駆け抜ける

「革命」Dios/シグナルP


中世とは明記されていないが、馬に乗る情景を想起させる歌詞があるので、このくくりに入れた。

この後も数曲「Dios/シグナルP」の楽曲は紹介させていただくが、しっかりと安定感のある調声と音作りが特徴のPである。
豪華にストリングスを効かせたこの楽曲は、「今」を変える焔をしっかりと胸に宿してくれる。

聖少女は神の声を聞いた!そして破滅へと

「ラ・ピュセル」Dios/シグナルP


ジャンヌ・ダルクをモチーフにした楽曲。

サビにかけて盛り上がる展開の楽曲に、運命に抗わず先を切り開いて行く彼女の人生になぞらえた歌詞が印象的。
ところどころフランス語のふりがながふられていて、ちょっと勉強にもなる。

「少女」と「革命」もしくは「戦争」というモチーフは皆好きなものだが、この曲は「覚悟」が伝わってきてぐっとくる。
MVの白百合と薔薇も美しい。

二人一緒なら怖くない…耽美と放蕩の向こうへ

「カンタレラ」黒うさP


「カンタレラ」とはボルジア家に伝わる秘蔵の毒薬のこと。

ボルジア家は近親相姦の噂があった貴族で、その腐乱しつつも美しいモチーフが見事に描き出されている。
個人的には魔夜峰央の絵柄で描かれたPVもおすすめなので、そちらも検索していただきたい。

まだこの曲の発表当初はボカロの数が少なく、KAITOとミクというYAMAHA製のボカロが兄弟設定になったのも記憶に新しかった。
それを設定として生かした良曲である。

12時になったらお別れ…期限付きの短い逢瀬

「サンドリヨン」Dios/シグナルP


「サンドリヨン」、とは「灰かぶり」。つまりシンデレラのことである。
Dios/シグナルPらしく、しっかりと作り込まれたサウンドに、伸びの良いミクの声が乗っかる。

駆け引きのつもりじゃないのに、それが男心を焦らしていく…燃え上がる短い恋の炎。
ボカロ黎明期の曲ではあるが、「歌ってみた」ジャンルなどではまだまだファンの多い楽曲だ。

配役を鏡音リン・レンにした銅メロディーの別歌詞曲「アドレサンス」(思春期)もよければ楽しんでいただきたい。

ボカロ中世風楽曲の魅力はその背景にある!

中世風の楽曲のどこがいいかというと、その背後に設定されているストーリーが読み取りやすいところ。
もともと私たちは中世風の童話を読んで育ってきている人間が多く、パッと「お姫様」や「王子様」と言われると、和風ではなく中世ヨローッパ風の「お姫様」や「王子様」を連想するようにできている。

そうしたDNAに刻まれている情報が、楽曲を聴く際の補強材となっている。
さらに今回紹介した曲は、「魔女」、「革命」、「ジャンヌ・ダルク」、「ボルジア家」、「シンデレラ」と、その成り立ちや物語を調べたくなったりすでに知っているものが多数。

ファンタジーものが定番となった現代で、これらのイメージはとても広く根付いている。
そのイメージの中で遊んでいると、楽曲の背景まで気になってくることは間違いなし。
是非ともこの美しく怠惰で、素晴らしく情熱的な世界を空想しよう。

文=阿部春泥

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