
「人間椅子」というバンドをご存知だろうか。
1987年に青森県にて結成され、バンドブームの時代には「イカ天」などに出演したことで一部の世代ではおなじみ。
70年代風ブリティッシュ・ハードロックの楽曲に、津軽弁やオカルトの要素を入れた歌詞でコアなファンをつかんだバンドだ。
オリジナルメンバーはギターボーカルの和嶋慎治とベースボーカルの鈴木研一。これに第4期から加わったドラムボーカルのナカジマノブのスリーピースとなっている。
全員がボーカルを取るというスタイルもさることながら、楽曲がとてつもなくおどろおどろしく、「日本版ブラック・サバス」と呼ばれているのも納得。
そして歌詞に含まれる「オカルト」の要素が面白い。
そんな人間椅子は、実は日本の文豪作品をモチーフに楽曲を作ることが多い。
それらを一挙に紹介したいと思う。
動画で見えてくる「文豪」たちへのラブソング
さて、ではどのような楽曲が存在しているのだろうか。
MVとセットで語っていく。
カラオケで歌いたいならこれ!江戸川乱歩に捧げた名曲「怪人二十面相」
まずは外せない乱歩作品の怪人「二十面相」をモチーフにしたこの曲。
少年探偵団シリーズなどで怪人二十面相はおなじみという人もいるのではないだろうか。
残念なことに小学生の頃筆者はアルセーヌ・ルパンシリーズにはまっていたので少年探偵団シリーズは読まなかったのだが、今になって集めたい気持ち満々である。
メロディーがインパクトがあるのと同時に覚えやすいので、カラオケで人間椅子をじわじわと広めたい人はこの楽曲から入ると良いだろう。
鬱くしい世界を楽しみたいなら泉鏡花に捧げたこの曲「夜叉ヶ池」
泉鏡花の代表作を楽曲にしている。
夜叉ヶ池には白雪という龍神がおり、恋人を恋しく思っている。
しかし、彼女が移動してしまうと大雨が降ってしまうので、おとなしく池にいて泣き暮らしているのである。
映画化もされているこのビッグタイトルを楽曲にしてしまうのだから陳腐になりがちなところを、和歌調の詞にすることにより見事に調和させている。
妖しくも美しい横溝正史の世界をなぞる楽曲「悪魔の手毬唄」
鬼首村(おにこべむら)で起きる殺人事件を描いた横溝正史の「悪魔の手毬唄」。
これを楽曲に起こしているのだが、本当に殺人事件の内容しか書いていない!
楽曲もブラック・サバス感満載で、「これぞ人間椅子!」と拍手喝采したくなる出来である。
すみません公式のMVは見つかりませんでした。
繊細な文章をこの楽曲から想像して!三島由紀夫へ捧げる曲「命売ります」
そして人間椅子の中でも最新の曲がこの「命売ります」。
なんと連続ドラマ主題歌に選ばれたのだからファンからすると驚天動地だったろう。
ドラマの原作が三島由紀夫の「命売ります」のため、今までと同じように人間椅子も原作から楽曲を練っている。
訴えかける歌声が胸にくる一曲である。
文豪を愛してやまない人間椅子の進む道
人間椅子には他にも文豪作品から作られている楽曲は多い。
江戸川乱歩の「芋虫」だとか、「陰獣」だとか。太宰治の「人間失格」だとか。
しかもそのどれもが名曲なのである。
そんな彼らが、今後どんな楽曲を発表するのか。
うーん、どう考えても今までと同じテイストでいくでしょう!
文豪作品や落語や民俗学からちょちょっとテーマをいただいて、かっこいいハードロックに仕上げる…これは人間椅子でないとできないし意味がないのだ。
今は文豪ブームでもあるし、どこかとコラボとかして欲しいですね。
文=阿部春泥