長く続いている少年漫画といえば、あなたは何を連想するだろうか。
「ONE PIECE」だろうか。「ドラゴンボール」だろうか。
続きが読みたいから冨樫早く「HUNTER×HUNTER」描いて!という人もいるかもしれない。
しかし筆者は何と言っても「ジョジョの奇妙な冒険」が好きなのであります。
「ジョジョ」は1986年から連載が続いている荒木飛呂彦による漫画。
1部から現在8部まで連載が続いている。
ジョースターの血統を持つ主人公、それに立ちはだかる敵、テーマは「人間賛歌」。
6部までは週刊少年ジャンプで連載され、7部の途中から現在連載中の8部は「ウルトラジャンプ」に掲載されている。
3部から「スタンド」と呼ばれる概念も出現。
スタンドとは、自らの精神エネルギーを表現したもので、言ってしまえば超能力の一種。
3部の主人公・空条承太郎の持つスタンドは「スタープラチナ」と言い、超精密な動き、抜群の破壊力、さらに時間を止める能力まで付いている最強スタンド(時間を止められるようになったスタープラチナは「スタープラチナ・ザ・ワールド」と区別される)。
各々のキャラクターに個性的なスタンドが付随していて、スタンドバトルはそれぞれの能力を最大限に活かしスリル満点。
そんな「ジョジョ」のスタンドは、4部からは音楽が元ネタになっている。
バンド名、曲名、その他諸々あるわけだが、それをここで紹介したいと思う。
ただし全部挙げていると信じられないぐらい長くなるので、まずは第4部の主人公側4名とボスキャラ1名についてだけ!
引用元になったバンドの豆知識もつけちゃうぞ!
誰よりも優しいスタンド能力を持つ主人公「東方仗助」
Pink Floyd「Shine On You Crazy Diamond」
第4部主人公の「東方仗助」は、第2部主人公のジョセフ・ジョースターの隠し子。
絶大的人気を誇る第3部主人公の空条承太郎の叔父にあたる。
第4部のストーリーは、ジョセフの遺産(存命中)を管理する際に仗助の存在が発覚、承太郎が仗助に会いに行くところから始まる。
その後二人は仗助の住んでいる町「杜王町」(仙台がモデルだ)を守るために、様々なスタンド使いと戦うことになる。
仗助のスタンド名は「クレイジー・ダイヤモンド」。
これはPink Floydの名曲「Shine On You Crazy Diamond」からの引用。
楽曲自体が9つのパートで構成されていて、パート5とパート7がボーカル入りになっている。
この楽曲はPink Floydの初期の中心メンバーである、シド・バレットについて書かれたものとしていたが、作詞者のロジャー・ウォーターズがのちにそれを否定。
まあでもシド・バレットのことだろうなあ…とは全世界のファンは思っている。
タイトルの頭文字を取ると「SYD=シド」になることからもなんとな〜く想像はつく。
仗助の「クレイジー・ダイヤモンド」は、「物を治す能力」。
大怪我をした人間も治してしまうところから、承太郎には「一番優しいスタンド能力」と評されている。
バトルに特化した能力ではないものの、この力を使って犯人を追い詰めていくかっこよさに痺れるのだ!
歌詞の中に「ou were caught in the crossfire of childhood and stardom, blown on the steel breeze.(鉄の風に吹き付けられながら、幼少期を犠牲にしてスターの座についた)」とあるように、仗助は幼い頃高熱を出し、それをきっかけにスタンド能力に目覚める。
トレードマークのリーゼントはその時、高熱の仗助を乗せ、母が運転していた雪で埋まってしまった車を助けてくれた恩人をリスペクトしてのもの。
きちんと意味付けされているのが最高!
敵から仲間に?虹村億泰の空間を削り取る「ザ・ハンド」
The Band「The Weight」
敵から一転、仗助の親友になるのが「虹村億泰」。
彼のスタンドは「ザ・ハンド」。右手で空間や物質を削り取ることができる、使い方によってはかなり強いスタンド。
手前の空間を削り取ることによって瞬間移動も可能。
そんな億泰の「ザ・ハンド」というスタンド名は、アメリカの有名バンド「The Band」から。
オリジナルメンバーの全員が様々な楽器を演奏できるオールマイティなバンドで、1994年にはロックの殿堂入りを果たしている。
案外器用な億泰を体現したようなスタンド名である。
最強の巻き込まれ体質!広瀬康一「エコーズ」
Pink Floyd「Echoes」
実は仗助よりも早く本編に登場し、最後には承太郎に「君がいてよかった」と呼ばれるまで成長するスタンド使いがいる。
それが広瀬康一。スタンド名は「エコーズ」。
このエコーズはなんと3パターン登場し、それぞれ「ACT1」、「ACT2」、「ACT3」と呼ばれている。
初めは「物体に音を染み込ませる能力」。
自分のことを疑われた時に、「信じて!」という言葉を染み込ませて、母親を敵から救ったエピソードがある。
そしてそれが進化し、「擬音の効果を実体化させる能力」となる。
例えば「ビューッ」という文字を貼り付けると風がビューッと吹いた時と同じ効果が出る。
「ドジュゥゥ〜」ならそこだけアッツアツに熱せられたりする。「ボヨヨ〜ン」ならその文字に触れると跳ね返る。
そんな能力が進化して、「ACT3」は「重力を操る能力」となる。
康一自身も物語が進むにつれてどんどん成長していくので、ある意味仗助よりも主人公感のあるキャラクターかも…?
「Echoes」はなんと23分30秒もの超ロング曲。ザ・プログレ!
当初は「Return of the sun of nothing」と呼ばれていたが、1971年の夏頃に「Echoes」に改名されたとされている。
曲名も進化しているのだな。
なんと単独での単行本まで発売!グッチとコラボまでした人気キャラ「岸辺露伴」のスタンド
Bob Dylan「knocking on Heaven’s Door」
第4部きっての人気キャラと言ったらこの岸辺露伴だろう。
初めは仗助と敵対するスタンド使いとして登場。
その後ラストバトルでは味方側になるものの、仗助とのウマの合わなさっぷりは徹底していてむしろ爽快とも言える。
名言である「だが断る」の発信者でもあり、好奇心の強い漫画家。
荒木自身をモデルにしたのではないかという発言に荒木は「似ていない」と言っているものの、奥さんは「そっくりですよ」と言っているとか…。
あまりの人気に「岸辺露伴は動かない」という番外編が雑誌に載り続け、なんと単行本にまでなっている。
グッチとコラボし、露伴がグッチの服を身にまとう短編などもあるため、要チェックだ。
個人的には「密漁海岸」のアワビとの格闘がツボだったのでそちらも読んでいただきたい。
彼のスタンド名は「ヘヴンズ・ドアー」。能力は「自分の絵を見た人間の“人生の記録”を閲覧することができ、自由に命令を書き込める」というもの。
つまり、自分が描いた絵をみた人間を本のようにしてそのページを読むことができ、さらに「岸辺露伴に攻撃できない」だとか、「誰々に会ったことを忘れる」だとかを書き込んでそのこと自体を忘れさせられるなんともチートな能力。
ページを「開く」ところから、スタンド名が連想されたと思われる。
しかし自分自身の記憶や記録は読めないため、それが第4部では大きなキーワードとなって物語に関わってくる。
露伴を幼い頃助け、現在は幽霊になっているキャラクター「杉本鈴美」も関連しこのスタンド名をつけたのだとしたら、曲の引用としては見事!としか言いようがない。
第3形態まである「平穏に暮らしたい」ラスボス、吉良吉影のスタンド
Queen「Another One Bites The Dust」
第4部ラスボスである吉良吉影。
殺人者でありながら「平穏に暮らしたい」というその姿勢には共感する人間続出の、どうも嫌いになれないタイプのキャラクター。
露伴の幼馴染である「杉本鈴美」を殺した犯人でもあり、スタンド能力は「触れたものを爆弾に変えることができる」というもの。
つまり人間を殺した時に死体の隠し場所を考えなくてもすむ!わーサイコ!
「女性の手首に性欲を感じる」という変態キャラでもあり、今まで犯した殺人は数知れず。
仗助たちは一度は吉良を追い詰めるものの、エステ「シンデレラ」のオーナーに無理やりいうことを聞かせ新しい顔を手にいれた吉良は、追及の手から逃れ他人である「川尻浩作」として暮らすことに。
ちなみにエステのオーナーはスタンド能力で吉良を別人に変身させたあと爆弾にされて殺される。サイコパス!
新しい暮らしを始めている吉良(川尻)は自分の息子に追い詰められるのだが、そこで目覚める能力が「バイツァ・ダスト」。
元々の「キラー・クイーン」というスタンド名とこの第2の能力「バイツァ・ダスト」は、言わずと知れたロックの大御所Queenから名前を取っている。
「Another One Bites The Dust」の邦題は「地獄へ道づれ」。
特定の人間が自らの秘密を漏らす、危害を及ぼす、自殺しそうになる、など、「吉良=川尻」の秘密の真相に仗助たちがたどり着くきっかけになりそうな時に、強制的に時間軸を戻すという能力。
邦題通りじゃないっすか!!
ちなみに吉良が「吉良吉影」として登場するときの第1形態はモデルがデヴィット・ボウイと言われていて、なるほどーという感じだ。
第4部はかなりの長編!お気に入りの「スタンド使い」を見つけよう
さて、主要キャラクターのスタンド名と能力、その引用元となったバンドや楽曲名を挙げてきた。
しかしジョジョ4部「ダイヤモンドは砕けない」は、とっても長い話なのだ。
杜王町で起こる大小様々なミステリを仗助たちは解き明かしていき、ラスボスの吉良吉影との戦いまでたどり着くのにかなりの巻数を要する。
となると、それだけキャラクターの登場数も多いということ。
宇宙人であると名乗り出すミキタカ、億泰の兄であり家族のために人を殺すことを選んだ京兆、「お前このルックス大槻ケンヂでしょ」という音石明、美味しい料理で虫歯や肩こりまで治してしまうトニオ・トラサルディーなどなど、バラエティ豊かでスタンドももちろん人数分いる。
第4部はアニメ化もされているので、是非一度そちらもご覧いただきたい。
ジョジョの面白さは、漫画からもアニメからも、もちろん音楽からだって伝わるのだ。
文:阿部春泥