2016年にその姿を表すと同時に、覆面バンドという形態と楽曲の良さでみるみるうちに注目を集め、サマソニ出演が決定している「神様、僕は気づいてしまった」。
発表されている楽曲こそ少ないものの、タイアップが多く、耳にする機会も多くなっているはず。
何気なくyoutubeで検索してMVを流し見していると…え!こんなにいいバンドだったの!?
とあまりの楽曲のクオリティの高さにびっくりしてしまった。
MVの完成度がめちゃくちゃ高いという訳ではない。
楽曲と演奏と歌が最高だったのだ。
神様、僕はすごいバンドに出会ってしまった
だから僕は不幸に縋っていました
まずこのMVを見て欲しい。
決して派手だったり印象に残ったりする映像ではないのだが、聴いた時のインパクトとタイトルでやられ
た。
「だから僕は不幸に縋っていました」…なんちゅうタイトルをつけるんだ!
覆面だから表情こそみえないものの、メンバーそれぞれのテクニックのレベルの高さといい、案外複雑なメロディといい、それを無理なく歌っているボーカルといい、とんでもない衝撃を受けてしまったのだ。
そうしてもう一度このMVを見ると、なんとなくプレイヤーの心の中まで見えるようではないか。
覆面なのは「先入観なく音楽の良さを知って欲しい」からだということだが、覆面だからこそ人々の想像力を掻き立てる。
うーん、これはすごい。
あっという間にドラマタイアップ!半年間で駆け上がったキャリア
CQCQ
2016年にシーンに登場した後、あっという間に彼らはドラマタイアップを手にした。
2017年に放送された「あなたのことはそれほど」の主題歌だ。
タイトルが「CQCQ」。
この曲がデビュー曲となっている。
それまではネット上で「あいつらは何者だ?」と囁かれていた存在が、突然地上に出現したのだ。
それにしたってこのタイトルである。
「CQCQ」とは無線上で不特定の相手を呼び出すときに使うサインである。
つまり、これからメジャーの大海原に漕ぎだしていく彼らが、リスナーに呼びかけた声なのである。
サビでは信じられないほど高音で切実な叫びが聞こえる。
これをメジャー第一弾に持ってきたのは非常に賢い選択だと言える。
「僕の手に触れるな」、「わたしの命を抉ってみせて」…タイトルがエモすぎる!
僕の手に触れるな
わたしの命を抉ってみせて
正統派ロックバンドかと思いきや、ちょっとジャズの雰囲気を取り入れたりと、楽曲も思っているより幅広い。
共通しているのはタイトルセンスと高い演奏力。
それにしたってこの二曲、タイトルがエグくないか。
エモいを通り越している。
特に「わたしの命を抉ってみせて」は日常に潜む「裏」を描き出したMVとなっており、身に覚えある人間にはグサグサ突き刺さる。
ここまで鋭敏な芸風のバンドは久しぶりだ。
人間の裏は醜いけれど美しい
メルシー
誰しも心には隠しておきたい場所があるし、誰にも踏み込んでほしくない部分がある。
それを浮かび上がらせて、そっと撫でていくような楽曲が「神様、僕は気づいてしまった」の魅力だ。
つまはじきにされていると感じている日常、それを「否定」するのではなく、「肯定」しながら誰かの叫びを代弁する。
これが最高にいい。
この楽曲「メルシー」では「いっそ生きてこなけりゃ 僕が僕でなければ愛された」という歌詞がある。
さらに「ハッピーエンドなんて望んじゃいない」とも。
等身大の自分を探して欲しい、みつけて欲しいと願う現在のティーンの心に、この歌詞は重く響く。
醜さも美しさも全てが自分だと、誰もが受け止めて欲しいのだ。
それをしっかり言葉にするこのバンド、やっぱりすごい。
文=阿部春泥