和楽器バンドの進化が開く新しい音楽のマーケット

昨年暮れに発売された自身初のベストアルバム「軌跡 BEST COLLECTION+」が好セールスの中1月には横浜アリーナ単独公演を成功させ、その唯一無二な存在を知らしめた和楽器バンド。

次のステージへの進化を示す5thアルバム「オトノエ」が4月25日にリリースされた。

これを機に、和楽器バンドの「これまで」と「これから」をひも解いてみたい。

伝統とバランスを取る和楽器バンド

「和楽器バンド」というバンド名は実に秀逸だ。なんのてらいもひねりも無く潔い。バンド名であると同時に自分達の音楽ジャンルをも示してしまっている。しかしそれは、裏を返せば自分達の音楽性を囲う檻にもなり得るものだ。

和楽器バンド / 細雪

“和楽器”を有する”バンド”と名乗るからには、分かり易く「和楽器」がフューチャーされていなければ、名前負けという事になりかねない。「憂歌団」の様に”音楽ジャンル”を名前にしたグループはいくつかあるが、使用する楽器の名前をバンド名にするのはクラッシックやジャズの流れを感じさせる。

実際、和楽器バンドの楽曲は殊更に和楽器の存在を感じさせるものが多い。和太鼓、三味線、尺八、箏にメインボーカルである鈴華ゆう子の詩吟の節回しも加え、我々日本人には聴き馴染みのあるフレーズが楽曲に織り込まれている。

だが、和楽器バンドが進化する過程で、その織り込まれたフレーズは”あえて分かり易く”織り込まれていた事に気付かされる。

和楽器バンド / 4/25発売「オトノエ」収録大阪城ホール公演映像ダイジェスト

和楽器というのはあくまで「楽器」なのだから、本来クラッシックだろうがジャズだろうがロックだろうが、奏じることは可能なはずだ。それでも、それぞれの楽器演奏において伝統的なフレーズを踏襲し「聴き馴染み」を担保し和楽器の存在を示していたのは、和楽器バンドの”戦略”とも言えるものであっただろう。

リミッター解除で進化する和楽器バンドのスケール

ニューアルバム「オトノエ」を聴く限り、それまで「あえて」フューチャーしていた「和楽器らしさ」を越えて「和楽器を有するバンド」としての可能性に挑戦する様な楽曲を多く含んでいる様に思う。

和楽器バンド / 4/25発売「オトノエ」ダイジェスト


そのような、いわば実験的な試みはベストアルバム「軌跡 BEST COLLECTION+」に収められた「シンクロニシティ」で垣間見られたもので、今まで以上にバラエティに富んだ楽曲の中で「和楽器バンドらしさ」をしっかりと示している。

和楽器バンド / シンクロニシティ

それは、どんなジャンルの楽曲であっても「和楽器バンド」としての存在を示す事が出来るという自信の表れでもあるのだろう。

和楽器バンドが牽引する和楽器バンドというジャンル

和楽器バンドの成功は日本のミュージックシーンに新しい市場を開拓し、そのフォロワーとも言える和楽器をフューチャーしたバンドが増え始めている。

ロックバンドにおける三味線の存在を示すROA

ROA / Ooparts

高い音楽性とヴォーカル川渕かおりの見事な剣舞パフォーマンスで海外でも名高いKAO=S

KAO=S / RoaringTokyo

ヴァイオリンと和楽器の融合で、数々のカバーを披露する竜馬四重奏

竜馬四重奏 / YAMATO

葦笛を中心とした和楽器によるJAZZアプローチを聴かせるKARURA TRIO

KARURA TRIO 【カルラトリオ】

様々なバンドが「和楽器」の可能性に気付き、それぞれの方法で「和楽器」と現代音楽との融合を模索しながら、独自の音楽を創り始めている様だ。

和楽器バンドもまた、その名の通り「和楽器を有するバンド」のパイオニアとして、「和楽器と現代音楽との融合」というステージを越えて、更なる広がりを見せ始めている。

彼らが今後、どんな音を作り上げていくのか?和楽器バンドが織りなす、新しい音楽の創造に期待したい。

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