HER NAME IN BLOODは超えちゃいけないライン考えろよ!

HER NAME IN BLOODは超えちゃいけないライン考えろよ!

2017年の結成10周年を、苦難を乗り越え再始動で迎えたHER NAME IN BLOODのメジャー2ndアルバム「POWER」が4月4日にリリースとなる。

2015年にメジャーデビューし、国内のフェスでその存在を示しヨーロッパツアーで着実に認知を拡げていた矢先、在籍ドラマーの大麻所持により活動自粛となったHER NAME IN BLOOD。

新ドラマーを迎え新体制で活動を再開した彼らが放つ、HER NAME IN BLOOD新時代の幕開けとなるニューアルバムでは、更に進化する彼らのラウドサウンドが確認できる。

日本を捨て世界照準で躍進する2010年以降の国産ラウド

80年代には世界にその存在を知らしめていながら世紀をまたげなかった日本のラウドミュージックシーンは、2000年以降に再構築され2020年を前に再び盛り上がりを見せている。

HER NAME IN BLOOD / POWER

2000年以降の国内ラウドミュージックに見られる特徴は、活動初期からグローバルマーケットに照準を合わせているバンドが多いことだろう。

これは、音楽性を無視して「見た目」だけで「ヴィジュアル系」だの「アイドル」だのとカテゴライズして扱うプロモーターや老害専門誌によって硬直した国内ラウドシーンより、海外の方が柔軟に音楽そのものを受け入れてくれるからだ。

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世界のラウドミュージックファンは、日本に限らず国や言語を問うことなく「よりへヴィーでハードな」音楽を受け入れる土壌が昔からある。

国籍不問で受け入れる世界のラウドミュージックシーン

世界的な支持を得て40年も活動しているバンドScorpionsや世紀末に人気を博したRAMMSTEINは共にドイツのバンドだし、80年代にヒットした北欧メタルの雄EUROPEや、新時代を担うCHILDREN OF BODOMやArch Enemy、Nightwishなど世界的な成功を収めている英語圏外のバンドは多い。

ARCH ENEMY / The World Is Yours

この様にグローバルなラウドミュージックシーンには、国境や言語の壁を越えて受け入れる土壌があったからBABYMETALはウェンブリーアリーナのステージに立てたのだと思う。

そして、それを知っているからこそLADYBABYやBAND-MAIDなどデビュー間もないラウドミュージック指向のアーティストでも、国内で認知を拡げるより先に世界を目指す事になる。

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つまり、ラウドミュージック系のアーティスト達から、閉塞した日本のミュージックシーンは見捨てられているのである。

HER NAME IN BLOODが越えた「邦楽」「洋楽」の壁

そして、今回アルバムリリースとなったHER NAME IN BLOODは、現在MAN WITH A MISSONやCrossfaith、BABYMETALと並び、世界に名を知られた日本のニューラウドバンドなのである。

HER NAME IN BLOOD / SAVIOR

しかし一聴して分かる通り、全編英語詞をグラウルボイスで歌うHER NAME IN BLOODに、もはや日本のバンドとして”親しみ”を持つ事は難しい。

それは、オコエ瑠偉選手やケンブリッジ飛鳥選手、サニブラウン選手を応援する時の”戸惑い”にも似た自分の中にある” 選民意識”の表れかもしれないが、HER NAME IN BLOODを「日本のバンド」として”邦楽”の棚に並べる事の無意味さを感じてしまう。

HER NAME IN BLOOD / GASOLINES

いくら海外のラウドミュージックシーンが柔軟に音楽そのものを受け入れると言っても、歌詞のメッセージを広く伝えるなら英語詞は必須だ。

80年代に海外で広く受け入れられたLOUDNESSもVOWWOWも、90年代に海外を拠点として活動していたOutrageも英語詞をメインにリリースを重ねていたが、それでも彼らには「日本人バンド」として特別な親しみを持てていたし、Hi-STANDARDやELLEGARDENなど英語で歌うパンク系バンドも、やっぱり日本のバンドとして邦楽の棚に置く事に違和感は無かった。

ELLEGARDEN / Fire Cracker

しかし、HER NAME IN BLOODはどうにも「日本人らしさ」が感じられない。それは「英語詞だから」ということではなく、その声の”芯の太さ”にある様に思える。

VOWWOWの人見元基やOutrageの橋本直樹、筆者の好きな第3期LOUDNESSの山田雅樹など、海外にも通用する名ボーカリストは多いが、どこか声の芯の部分に農耕民族特有の”細さ”を感じる事ができた。それが「日本人バンド」としての”親しみ”にもつながっていたように思うのだ。

OUTRAGE / RISE

ところがHER NAME IN BLOODのボーカルIKEPYの声の” 芯”は、今まで日本人が出す事ができなかった”肉食人種”特有のそれなのである。

こうなると、楽曲に日本的なフレーズを感じられる訳でもないHER NAME IN BLOODは、もう”邦楽”としてのアイデンティティーを失ってしまう。HER NAME IN BLOODがサポート・アクトを務めた日系ボーカルを有するTriviumの方が、一周回って親しみを持てるくらいだ。

Trivium / The Sin And The Sentence

HER NAME IN BLOODの登場で、ついに日本のバンドは真に「邦楽」「洋楽」の壁を突破してしまった様に感じる。今後も、”肉食系”の声を持つバンドは増えていくだろう。

それでも、日本のバンドを知らしめるHER NAME IN BLOODの名が世界に拡がっていくのを応援していきたいと思う。

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